【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


「ううん、こちらこそごめんね。タイミング悪く入ってきちゃって」

「いえ……あの、私のことはお気になさらず、どうぞ図書室利用してください」

「……うーん、気にしないのは無理かな……」

「……え?」

「だって、一人で泣いてたんでしょう?何か嫌なことでもあった?」



私の頭にそっと手を置いて、顔を覗き込んでくる彼。



「俺でよかったら話聞くけど……」



なんて、親切なことを言ってくれて、胸の奥が暖かくなった。

本当に、良い人……。


胸の苦しみが消えたわけでは無いけれど、張り裂けそうなほどの痛みが和らいだ。


自然と頬が緩んで、彼に笑顔を向ける。



「心配してくださってありがとうございます……。その言葉だけで元気が出ました」



……うん、うじうじしてちゃダメだ。