【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



「……っ、ぅっ」



どうしよう……。

涙、止まらないっ……。


一目惚れ、だった。


ここで……図書館で、始まった恋が、図書館で散った。


利用者が誰もいなくて、よかった……。

こんなところ見られたら、情けないもん……っ。


まだ止まりそうに無いから、誰も来ませんように……



ーーーバタン。



「……あれ?」



私では無い声が、図書室に流れた。

……え?

慌てて顔を上げると、そこには一人の男子生徒の姿。

綺麗な顔をしたその人は、私を見て目を見開いていた。



「……えっと……大丈、夫?」



ゆっくりとこちらに近づいてくる彼に、慌てて立ち上がる。

私は顔を見られないように手で隠して、彼に背を向けた。



「す、すみません……大丈夫です」



ゴシゴシと目を擦って、涙を拭った。