ああ、早く彼らの会話が収まりますように……。







「なあ、お前試しに連絡先聞いてみろよ」



「は?無理だって、相手にされねーって」



「じゃあ話しかけるだけでもいいからさ!」





私の願いも空しく、そんな会話をしながら少しずつ近づいてくる男の子たち。



……いや、来ないでっ……。



スカートの裾を、ぎゅっと握った時だった。







「ーーおい、うるせえんだけどお前ら」







図書室に響いた、低い声。







「ここ図書室な。気持ち悪い理由で居座ってんじゃねーよ」







彼が、どういうつもりでそう言ったのかはわからない。



読書を邪魔されるのが嫌だったのかもしれないし、騒がしくされることが迷惑だったのかもしれない。





きっと、私を助けるつもりなんて、彼には微塵もなかったんだろうけど……





ーーこの時私の瞳に、彼がヒーローのように映ったんだ。





そして、見つめるだけの恋が始まった。







【無自覚な誘惑】