【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



「……あの、どういう、意味ですか?」



言われている言葉の意味が理解できなくて、首をかしげる。


和泉くんは、ますます眉間のシワを寄せて、吐き出すように言った。



「そうやって男誑かせて、楽しいですか?」

「たぶら、かす?」

「何惚けてるんですか?……ほんと、虫唾が走る」



……っ。

意味はわからなくとも、向けられている嫌悪感ははっきりとわかった。


さっき堪えたはずの涙が、視界を歪ませる。



「そんな顔したって、俺は騙されませんから」



騙す、って……?

混乱している私の耳に、入ったのは……



「先輩みたいな軽そうな女、俺嫌いなんですよ」



はっきりとした拒絶を示す、和泉くんの言葉だった。