それにしても……
「あの……呼び捨てでいいですよ?花染さんなんて……」
ひとつ年上なだけだから、そんな気を遣ってくれなくていいのに……
むしろ、私の方が教えてもらっている立場なんだから。
「え、ええ!そ、そんなっ、俺ごときが呼び捨てなんて出来ませんっ……!」
ブンブンと、音が鳴るんじゃないかと思うほど、激しく首を左右に振った柴原くん。
あまりに全力で否定され、少し肩を落とした。
そんな私に気づいたのか、柴原くんはより一層アタフタして、「ええっと……!」と声を漏らしている。
そして、意を消したようにピンっと背筋を伸ばし、私を見つめた。
「じゃ、じゃあ……し、ししし、静香さん、って呼んでもいい、ですかっ……?」
「!……はいっ!」
「あっ……の、お、俺のことも……健太って呼んでくだ、さいっ……」

