【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜



頭の中は混乱状態で、正気でいられるわけがなかった。



「ごめんなさい、私……」

「案外ドジなんですね……って、もしかして計算ですか?」

「……え?」

「……いや、何にもありません」



嫌味なことを言ってしまう幼稚な自分。

もう、本当に速く、ここから出て……



「あ、あの、怪我してますっ……」

「え?」

「首の、ところ……!」



言われて触ってみると、ズキリと痛んだその場所。

でも、そんなこと今はどうでもいい。

それよりも、こいつと一緒にいることの方が、今は危険だと思った。



「……ああ、別に平気です。痛くもないですし」

「で、でも……」

「平気ですってば、放っておいてください……ちゃっちゃと片付けましょう」

「あ……置いといてください……私、ひとりでするので……」

「上の方は届かないでしょう。またドジされても困るんで」



急いで元あった場所に、本を戻していく。



「……はい、これで大丈夫、です」

「……助けてくださって、ありがとうございました……」

「……それじゃあ、俺もう行きます」



ようやく離れられる……と、そう思ったのに。