そう思って離れたのに、花染静香は二度目のドジをやらかした。
危なっかしい脚立の持ち方をしていたから、ヒヤヒヤしながら見つめていると、案の定本棚にぶつかる。
再び慌てて駆け寄って、庇うように覆い被さった。
……本当に、何やってんの俺……。
結局放っておけない自分に自己嫌悪しながら、無事を確認しようと花染静香の顔を見た。
その顔は、やっぱり赤く染まっていて、心配するように俺の顔を覗き込んでいた。
「……い、ずみ、くん……」
彼女の口から自分の名前が出てきたことに、全身の血が湧き上がるような衝撃を受けた。
ーーは?
「……どうして、俺の名前知ってるんですか?」
ありえ、ない。
だって俺たちにはなんの接点もないし、この女は有名人だから俺の方は名前を知っててもおかしくないけど、俺はただの後輩ってだけで、騒がれているわけでもなければ何か秀でたものがあるわけでもない。
ああ、もうわけわかんねー……ッ。

