【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


「ご、めんなさ……」



そう言った花染静香から、ふわりと花の匂いがして、慌てて手を離した。

どうすれば、いいんだよ……この空気。



「…………大丈夫、ですか?」



とりあえず無視するわけにもいかず、確認するように問いかけた。



「は、はいっ……ごめんなさい、助けてくれて、ありがとう、ございます……」



……なんだ……?



「……怪我が無いなら、よかったです」



思ってたのと、違う……。

噂から、もっと高飛車そうな人間だと思っていたのに、随分とおどおどしているし……なんか、顔、赤くないか……?


……いや、見間違いに決まってるか。


今すぐ帰りたいけど、せっかく来たし、とっとと本だけ借りて帰ろ……。