【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


そう思って、ゆっくりと図書室の扉を開ける。


……誰もいない、か……。


ほっと胸をなでおろし、中に入ろうとした時。



「……あ」



図書室の奥の本棚に、会いたくない人物を見つけてしまった。

脚立に乗って、上の本棚に手を伸ばしていた花染静香。


向こうも俺の方を見ていて、バチリと視線がぶつかる。


出て行こう。瞬時にそう判断したが、予想外の出来事が起こった。


脚立が揺れ、花染静香がバランスを崩す。

前と一緒だった。

勝手に身体が動いて、気づいたら俺は、落ちた花染静香を受け止めるように抱きしめていた。



「あ、あの……っ……」



見た目により幼い声に、胸がどきりと音を鳴らす。