無現実 名の知れた月

あれから鉈は和尚が預かっているのだが、これもまた不思議なことにいつの間か名月の傍にあるのだ。寝ている間に来たのだろうか。和尚が消えた鉈を探して名月のいる部屋へ来て、お前の後ろに鉈があると言われ、後ろを振り向くと鉈があった。気配すら感じることがなく、不愉快で怖かった。
意志を持っているかのようだ。

和尚が持って行ってもいつの間にかあるので仕方ないので、そのまま名月の傍に置いておいた。ふとした時には、あの鉈のことについて考えていた。気が休まらない。和尚は心配してか、名月の部屋の隣にある部屋にいるようになった。

そこで我に返り思い出すのをやめ月を見る。
今日はあまり寝れずにいた。
八月十五。
今回は何も起きないようだ。だが、名月の精神は去年から徐々にわかりやすく、すり減っていった。
見た目は変わらず無気力、無表情だが、どことなく思いつめた表情になった。
和尚には何も起きてはないらしいが心配をかけてしまっている。

壁に寄りかかり瞼を閉じた。