和尚の質の悪い冗談に名月は和尚の近くにおいてある警策で叩いてきたが、それにしても真面目に言うものだから信じてしまうのも無理はないだろう。和尚は何故だ、と疑問の喘ぎ声がしたが、まだからかう気力だ残っているのかと思った。

何故か不快感でしかなかったので、そのまま和尚を大広間に残したまま大広間からかなり離れた道場の部屋に行き、そこで鉈を置いてきてしまったと思い出したが気にしないことにした。

ここで寝ているところを見られると、みっともないと和尚から説教がくると思うが、気にしないことにして仰向けに寝っ転がった。心地よい日差しが当たって瞼を閉じた。

急に体が急落下する感覚になり、体が圧迫され特に心臓に何か圧力を強く感じ息苦しさで目が覚めた。どうやら息も止まっていたような感じであった。深呼吸をして上半身を起こした。まだ少し息苦しく呼吸が荒い。大広間で寝ていたようだ。鉈を持ちゆっくりと起き上がり道場へ向かおうと歩いた。

道場の襖を開けると珍しく和尚の姿があった。和尚は座布団の上に正座をしながら何かを唱えていた。表情は真剣だった。珍しいと思いながらあたりを見渡すと和尚の目の前の床に札が貼ってある。そこで鉈を鞘から抜き取ろうとしたが、名月が気配を感じとってしまい意識を完全に失わせることができなかった。