"我等は知っている.......彼の名を。顔を、声を。
そして彼の存在を。
我等は本来、世界を―――君達人を傍観し見守るために居る。
故に一度記憶したものを忘れることは無い。
例えこの世界そのものすら忘れてしまったことさえも、我等は覚えている。
我等だけは覚えている"
哀しい。悲しい。
とても、哀しい気持ち。
伝わるその感情に感化され、思わず涙が出そうになる。
その哀しみの理由は分からないのに、ただ哀しい。
「その者の―――彼のことを、何故俺達は思い出すことが出来ない?
どうして、お前達だけしか覚えていない?
.......彼というのは、一体何者なんだ?」
涙が目に溜まる。
二人はそれを堪えて、そしてライルは問う。
心なしか発したその声にも震えが帯びているように思えたが、それでも強くライルは問う。
"我等から語ることは...........出来ぬ"
ッ。
その声に、心から伝わる哀しい感情が一気に増してとうとう堪える二人の瞳から涙が零れる。
生温かい涙の伝う感触。
それをハッと認識してしまった途端に、涙は止まらなくなる。
どうしてだ。
どうして語ることが出来ないのか?
そう問いたい。
だが伝わってくる竜達の感情に、もはや二人は言葉すらも出せない。
"我等は知っている。我等は覚えている。
.........だが我等は彼の存在を語ることは出来ぬ。
―――語れば彼が命とその存在の全てを賭けて正しい位置へと戻した運命の歯車を、再び狂わせることとなる。
彼を冒涜することとなる。
それは、我等には出来ぬ"
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