この森の雰囲気と連動して蘇る様々な記憶達。
エルザのこと。村のこと。
そしてロアルのこと。
幸せな記憶も哀しい記憶も全てが入り混じり蘇る。
ッ。
そんな記憶達の中にまた感じる一筋の違和感。
そう、それはあの戦いに幕が閉じてから今までで幾度か度々に感じる違和感と同じもの。
その正体は分からない。
ただそれはほんの微細な針のように記憶に引っ掛かって、チクリとだけ心を疼かせる。
ただそれだけの違和感。
シエラは幾度かあったその違和感を感じる度に、記憶の中で必死にその違和感が何であるのかを探そうとした。
突き止めようとした。
だけれど幾ら過去の記憶に意識を巡らせてみても、探すそれは見付からないままで彼女は半ば困り果てていた。
自分の中から、何かが欠落している。
前の自分の中にはまるで当然のようにそこにあったものが、今では跡形も無く全てが消え去っている。
だけれどそれが何であるかが分からないもどかしさ。
(私は―――)
思い出さなくてはいけない。
でも、思い出してはいけない。
相対する二つ。
いつもその二つがぶつかり合い拮抗し相殺する。
(私はあの時―――誰とこの道をこうして今みたいに歩いたんだろう?)
記憶に引っ掛かる違和感は、彼女が今日この場所へライルと共に訪れる前。
その中でも一番新しい、この場所での記憶。
いつの日のことであるかも、どうしてこの場所に立ち寄ったのかも鮮明だった。
その時に抱いた気持ちなどは、一層に鮮明に残っていた。
あの時も今と同じ。
誰かが彼女の隣に居た。
彼女にとってかけがえない、彼女の哀しみさえも包み込むような強さと優しさを持った温かい誰か。
それこそあの時は彼女の命を狙っていたライルではあるが、今現在彼女の隣にこうして寄り添い居るのと同じような温かい存在。
そんな存在が、確かにあの時も自分の隣に居たはずなのに。
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