「前の人もひどかったよね。」

「ね。どうしていつもそうなんだろうね。」

 分かってる。
 自分で選ぶと碌なことないって。

 お店に入ってすぐ知世に言われた『ダメ男収集家』
 全てはこの一言に尽きる。

 何も好き好んでダメな人とお付き合いをしているわけではない。
 私だってごく普通の人だと思って付き合い始める。

 それなのに付き合いが進むにつれて、さすがの私も「ん?」と思うようになった。

 前回の人は普通の会社に勤めていた人だった。
 お付き合いも順調で今度こそはと思っていたのに……。


 ある日、急に仕事を辞めてきてこう言った。

「朱音が頑張ってるのを見て、俺も頑張ろうって決心した。
 だから結婚して俺を支えてくれないか?」

 彼の言葉だけを聞けば夢にまで見たプロポーズ。

 いやいや。待って。
 結婚するのにどうして仕事を辞めてきた?

「頑張りたいって何を?」

「ん?俳優。」

 お芝居が好きだって初めて聞いた。

「子どもの頃からの夢で。
 朱音の稼ぎなら俺1人くらい食わしていけるだろ?」

 今までの経験的にこれはダメだって分かって早々にお別れした。

 彼の最後の捨てゼリフはこうだった。

「朱音の収入を見越して仕事辞めてきたんだぞ!
 俺の人生どうしてくれるんだ!!」

 自分のことしか考えてない人だって、ここまで言われてやっと気がついた。