しかし朱音がお手洗いに席を立つと、待ってましたとばかりに健太郎は俺へ質問を向けた。
「海外赴任してたんでしょ?
向こうでブロンドヘアの彼女ももちろんいたよね?」
「まぁ、それは、ご想像にお任せするよ。」
実際のところ、仕事が忙しくてパートナーらしいパートナーではない割り切った関係ではあったけれど、いなかったわけじゃない。
それも朱音への気持ちを自覚する前で、朱音自身も俺へ気持ちが向かう前までは……いうまでもないわけで、それもお互い様だ。
ただお互いに聞かないし、言わないだけ。
「朱音ちゃんのこと本当に大事に思ってるってどう証明するんだよ。
俺はあんたよりずっと大切にする自信がある。」
挑戦的な言葉を向けられても、どうしてか可愛いもんだと思えてしまった。
外見的なものもあるだろうけど。
男としてのライバルというよりも、弟だと思えたからかもしれない。
それよりも何よりも実際に俺をこの場へ連れてきた朱音の気持ち……かな。

