俺は腕を伸ばして朱音を捕まえる。

「なぁ。俺はどうしていつまでも澤口?」

 抱き寄せてベッドに引き込むと「もう」ってため息混じりの声がして、それが俺を余計に煽ってるって本人に自覚はないんだからタチが悪い。

「朱音?俺は、誰?」

「……恭一。」

「うん。」

 こんなことで少しだけ機嫌が上向きになるんだから、俺なんてちょろいもんだ。

「あのね。健太郎は実家のご近所さんで。
 昔から可愛がっていた弟みたいなものなの。」

「……そう。」

 朱音はなんとも思っていないだろうから聞かなくても説明してくれる。

 でもさ。それって向こうは姉だとは思ってないってやつだろ?

 嫌な予感しかしないのに、男のプライドが邪魔をする。

「久しぶりに会って来ようかな。
 地元の子にも、、その、結婚することを自分で報告したいし。」

 照れたように言う朱音をもう一度、抱きしめ直して背中に顔をうずめた。

 そういうことを照れたように言うのが、、可愛い奴め。