「緊張し過ぎ。」

「だって〜。」

 今日は澤口のご実家へ挨拶に来ている。

 澤口はうちへの挨拶は済ませていた。
 緊張するなんて言っておいて涼しい顔をして「朱音さんと結婚を前提にお付き合いさせてもらっています」だとか「結婚して必ず幸せにします」だとか口にした。

 お母さんはもちろん大喜びして、お父さんも声を詰まらせつつ「朱音を頼むぞ」と言ってくれた。

 そつなくこなした澤口を恨めしく思いながら、今日は逆の立場になるわけで。

 澤口のことを何も知らなくて不安に思っていたのに、2人の間柄は着々と結婚へと向かっている。

 澤口の好みから想定して控えめなワンピースに、もちろん化粧も控えめにして上品な感じで整えてきた。

 会った時の澤口は「フッ」と笑っておいて「可愛い」と一応は褒めてくれた。