「別れを切り出される俺の身にもなって。
 俺、あなたのこと、これでも離したくないくらい大切に思ってるんですけど?」

 体を傾かせると澤口の体へと寄り添った。
 ぬくもりが温かい。

 その時はまだ澤口の気持ちは分からなくて泣きつけるような間柄じゃなかったでしょ?

 なんて言いたい文句も何もかもがもうどうでも良くなってくる。

「ま、朱音と一緒に仕事で海外へ赴任するって楽しそうだから心が動かないって言ったら嘘になるけど。」

 苦笑する澤口も体を傾かせて私へ腕を回した。

「会える時間が減るのはどうかと思うのはワガママか?」

 仕事が忙しくて。
 もちろん澤口も忙しいから会えないのは当たり前だと思ってた。
 だからジムへ行ったり、勉強に励んだりして……。

「私だって会いたいけど……。」

「だから杉原さんが結婚式に呼んでくれたんだろ?」

「知世の結婚式が関係ある?」

「友達の結婚式があれば仕事も大手を振って休めるでしょ?だそうだ。」

「知世………。」

 休日出勤さえも厭わない私へ知世からの優しいプレゼントだったんだ。
 目を潤ませているとその瞳にキスをされる。

 そんなキザな行動が似合ってしまうのが澤口の嫌味なところ。