お見合い相手はエリート同期


「その前にクリスマスディナーを食べよう。
 結婚式の後だし軽く雰囲気だけでもって軽めのを予約しておいた。」

 澤口はいつもスマートで本当に嫌になる。
 惚れ惚れすればいいのに、やっぱり私は素直じゃないんだと思う。

「牛丼屋……?」

「ハハッ。クリスマスイブに行く?
 ある意味、パンチ効いてていい思い出になるかもな。
 でも、もうちょっとカッコつけさせてくれない?」

 澤口は軽やかに微笑んで私の手を捕まえると俗に言う恋人繋ぎにした。
 それだけで心がざわめいて落ち着かない。

「……いちいち反応が初々しくて可愛いよな。」

「うるさい。」

 憎まれ口をたたいても熱くなる顔を抑えられない。

 今日の澤口は整った顔立ちにさらに輪をかけてスーツも似合っているし、なんていうか目に毒なんだもの。
 その上で普通の恋人みたいな雰囲気を出されて戸惑ってしまう。

「キス。してもいい?」

「どうして?」

 聞くだけ野暮というものだ。
 けれど頬を染めて頷けるほど可愛くなれない。