「毎日会って、俺がどんな奴か知って欲しくて、それで俺自身を信用してもらえてから言うつもりだった。」
だからなの?
だから先を急ぐみたいに会っていたの?
私へ気持ちを伝える為に……。
澤口の腕の中で顔を上げて見上げると真剣な表情を向けていた澤口にドキリとする。
澤口は手のひらで包み込むようにそっと頬に触れた。
「別れようって言われたけど、この化粧でいてくれるうちは俺も頑張ろうって思えた。」
この化粧。
それは澤口に言われて変えた薄めのメイク。
「それで社長賞も取れて朱音に「私といるとダメな男になっちゃうから」って言わせない立場も手に入れた。
だから、今なら言えると思って。」
そこまで考えてくれていたなんて。
澤口は頬を撫でて囁くように言った。
「もういいだろ?
俺は朱音を抱きたいんだけど。」
色気を醸し出して頬へキスをする澤口の体を押し戻す。
「待ってよ。」
「なんだよ。まだ何か?」
「だって………。」
あの時は勢いでそういうことになった。
改まってかしこまってそういう雰囲気になるのって、すごく気恥ずかしい。
だって澤口だよ?
絶対あり得ないって思っていたのに。

