失翼の天使―wing lost the angel―

社会人としては失格だったと思う。

私を育ててくれたERのスタッフにお礼も言わず、兄と姉に全てを任せ、部屋に残した荷物も合鍵で母親を含む3人で日中に運び出して貰って。

あの時は、自分で感情がコントロール出来なくて。

実家に戻るつもりはなかった為、急ピッチで借りて貰った今のマンションで1ヶ月ほど引きこもりの生活を送ってた。

それだけ好きで、信じてたのはショックだったけれど、人生においてあそこまで落ち込んだ事はなかった。

そつなく何でも熟して。

いつも笑顔で悩みなんてなさそうに見られて来たのに。



「着いたよ?降りられる?」



「はい……っ」



ボーッと窓の外を見つめながら考え込んでると、いつの間に着いたのか、鷺沼先生に声を掛けられて現実に戻った。

心配そうな顔してる先生に手を引かれ、タクシーから降りると、本当にこじんまりとしたお店が目の前に飛び込んで来た。

古民家をリノベーションして出来た居酒屋。

営業中の小さな札が下げられてなければ、絶対に気付かない。

いや、その札すら見落として通り過ぎる人も居る筈だ。

料理の匂いに包まれた土間。

小上がりになっており、グラディエーターを脱いで上がれば、畳の廊下に上がる。