失翼の天使―wing lost the angel―

タクシーで10分程の距離にあったマンションの前で降り、管理人さんに事情を説明して中へと入れて貰って5階に上がると、約束の少年がそこに居た。



「コウタ君……?」



「先生、電話の先生?」



「そうよ。ごめんね、不安だったね……」



玄関前にしゃがみ、じっと待ってた姿に思わず泣きそうになってしまい、初対面の子を抱き締めてしまった。

この子が、甥だったら……我が子だったら辛すぎる光景である。



「幼稚園はお休み?パパは?」



「お母さん、起きないから行けなかった……。パパはお仕事で帰って来てないよ」



「そっか」



手を繋ぎ、母親が寝てるというリビングに案内して貰うと、イビキが聞こえて来た。

涎を垂らし、深い眠りに就いてる。

テーブルにあるのは、プラスチック製の子供用のコップと牛乳パック。

これはコウタ君が自身で出して、飲んだのだろう。

部屋を見て回らせて貰うと、キッチンの流し台に精神科から出されたであろう薬の袋。

中身は空で、ゴミ箱を見れば大量に飲んであろう安定剤の小袋があった。



「……長崎です。これからODの患者を1名運びます。量は定かではありません。▲▲精神科に確認して貰って下さい。お願いします」



私はコウタ君の事を考えて、量が少ないかも知れないけれど搬入を決意し、鷺沼先生に連絡。