失翼の天使―wing lost the angel―

姉が私の背をポンポンと叩き、血圧計を手にナースステーションを出て行った。



「先生!私の出動は……;;」



「あ、それは……」



「俺から主任に言う。優海先生が言ってたように、有資格者が現場に赴くべきだとはわかってたけど、あいつは聞かないし、仙田さんも“私が行くから”って押し切られてだろ?これからはちゃんと、師長か仙田さんに頼む」



「はいっ!」



大池主任の立場が弱まったところで、仙田さんはずっと気掛かりだった事へ話を振って来た。

でも、今ここで何も言えない私に代わり、鷺沼先生が答えた。

ホッとしたのか、ウキウキして仕事に戻る仙田さん。

そんな彼女を微笑みながら見つめる鷺沼先生を横目でジーッと見る。



「――うわっ!;;」



「……可愛い子がタイプなんですね」



「何の話?;;」



「別に。でも、今日の先生は面白くない」



「何?;;」



「知りません。庇ってくれたのに……女にはみんな甘いんだ」



「どうしてそうなる?;;」



ムカつく。

何か気に食わない。

あの人みたいに、誰でも良いだろう。

鷺沼先生は誰の“彼氏”でも良いから、そのポジションに就きたいんだろう。