失翼の天使―wing lost the angel―



どうして人は、恋をするのか。

どうしてあの人は、欲に目が眩んだのか。

どうして彼は、こんなにも愛してくれるのか。



きっと答えは、まだまだ先にわかるだろう。

きっといつか、理解する日が来るだろう。

ただ、今わかってる事は、自分が幸せでなければ、人を幸せになんて出来ない。

自分が愛してあげなければ、人も愛してくれない。

傷付いた時、傷付け返すのは簡単。

でも、上書きも悪くない。

別の未来へと歩き出すのも。

立ち止まらない限り、私たちは生きる。

時は進み続ける。



「どうした?」



「賴真を好きになって良かったなーって」



鷺沼総合病院に入ったのは、傷付いたから。

家族の勧め、賴真とのお見合い代わり。

だとしても、恋に落ちるかどうかは私たち次第で、最初は知らなかった分、余計に交わるかわからない運命だった。

でも、私には最高の出会い。

この上ない、幸せを貰った。

もう傷などない。

折れた翼は治され、大きく羽ばたける。

腕をめいっぱい拡げて、賴真や子供を抱き締められる。



「やっぱり私の方がありがとうだよ」



「いや、だから俺だって」



どんな困難も乗り越えて行ける。

医者として。

妻としても母としても。

羽は治るどころか増えたようだ。

まるでそれは、熾天使(してんし)にように。



              - END -