失翼の天使―wing lost the angel―

「肝臓やってる……」



「コイルないわよ。大動脈遮断する?」



「点滴管細いの持って来てる?」



「小児用を積んでありますが」



「それ下さい。両端切って消毒して。それで部分的に遮断する。その間に運ぼう」



「わかった」



「準備します」



今、肝臓の出血を一時的に抑えて大きな病院に運べば、助かる可能性は大動脈を遮断するより上がるだろう。

点滴管でキツくならないよう、力加減に注意しながら出血を止めてガーゼを詰めて閉腹はせずに受け入れてくれた病院へと運んだ。

当直のドクターに引き継ぎ、私たちはお役御免。

遥真さんに連絡をし、こちらに回ってから病院へと戻る事に。



「結局、あの騒動は強盗だったのかしら」



「強盗は強盗でも、薬らしいっすよ。優海ちゃんが助けたオーナーが販売してて、金に困った若い連中が襲ったとか。で、従業員の1人が脅しにテーブルを上げたら、カップルの彼氏の頭に当たったらしい。薬欲しさが、一般客を巻き込んで大騒動になって出動要請ってわけですね」



「なるほどねぇ……。優海、疲れたの?」



「ん?大丈夫」



姉と遥真さんの会話を聞きながら、窓に凭れてボーッとしてると心配された。