「でも私、土曜日は前日が夜勤終わりですから、準備して行くと時間によっては……」



『9時……』



「無理ですね」



『お前、どこ病院?』



「鷺沼総合病院ですが;;」



『そうだったか!どうせ救命だろ?』



…“どうせ”?;;



『話は早い!そこに赤嶺師長はいらっしゃるか?』



「姉を知ってるんですか!?」



『“姉”だとっ!?嫁の看護学校時代の同期だ代われ!』



「え……;;」



『指導医の命令は?』



「絶対ですが……苅谷先生、指導医じゃないし;;」



『代われ』



「……わかりました……」



しつこい苅谷先生に負け、姉にスマホを差し出す。

最初は首を傾げてた姉は、電話の主の名を聞いて「もしもし、赤嶺でございますぅ」と、声をワントーン上げて出る。



「はい、はい……そうなんですね。はい……少々お待ち頂けますか?」



「何を話してるの?」



「鷺沼先生、院長のご子息としての権力あります?」



「はい……?;;」



「なくは、ないかと……;;」



「今週の土曜日、優海に研修医の超音波検査の指導をして欲しいと仰るドクターがいらっしゃいまして、優海の退勤時間を考えて、こちらでどこかお借り出来ないかと」



「ダメに決まってるでしょ!?」



…権力関係なくダメでしょ!