失翼の天使―wing lost the angel―

カーテン越しどころか、全扉が開いてるも1枚壁を隔ててる状態で言い合う私と兄に、姉が「病人相手に止めなさいね」と宥めて来る。

別に本気で言い合ってるわけじゃない為、うんうんと頷きながら黙る。

--ブーンッブーン……

ユニフォームのポケットの中で震え始める自前のスマホに気付き、画面を見れば以前の勤め先である大学病院のドクターの名前。

ERのスタッフではないけど、光化学治療医として勤める人。

研修医1年目の時にエコーの指導を受けた人。



「もしもし、長崎です」



ナースステーション内は別に電話禁止ではない為、声のボリュームは下げながらも出た。



『苅谷-カリヤ-だが、もしかして仕事中か?』



「そうですが、何かありました?」



『バイトしないか?』



「……意味がわかりません;;」



院内でのヘルプはアルバイトにはならないし、外部診療の報酬はその病院から。

大学病院に個人病院からのヘルプなんてあり得ないし、大先輩ながらこの人は何を言ってるのだろう。



『研修医への指導日に、外科から予約を受けてしまったんだ』



「そんな事を言われても、私、辞めてるので;;」



『どうでも良い』



…どうでもあるでしょ?;;