失翼の天使―wing lost the angel―

パンフをポケットにしまい直し、席を立つ。

手にした指示書を点滴台に置きに行く。



「お願いします」



「……あ、先生!!」



「何?」



「お、表でドクターと思しき人が……っ!」



「はい?;;」



そのままICUに向かおうとすると、仙田さんに呼び止められた。

主任になっても変わらずな彼女。

何度も振り返りながら手招きする仙田さんについて行くと、搬入口に蹲る男性……てか、我が兄が居た。



「何してるの?お兄ちゃん」



「“お兄ちゃん”!?」



「……痛ぇ……;;」



「ユウ君なの!?;;」



白衣でユニフォームが隠れてるとはいえ、何で彼氏にも気付かないのか;;

…まぁ、それが仙田さんか;;



「ちょっと触るよ?」



「……イッ……!;;止めろ、脱腸だ;;」



「……初療室空けて!開腹する!」



自覚はあったのか、自身で脱腸(鼠径ヘルニア)と気付いてた兄。

呆れながら仙田さんに指示を出し、私はストレッチャーを取りに行きがてら、手の空いてるスタッフを呼ぶ。

共に夜勤をしてる武藤君に執刀を押し付けて、それを嫌がる兄に麻酔をかける。



「指導医のお陰で遂に執刀だね」



「は、はい……っ;;」



これは兄に緊張してるのだろう。