失翼の天使―wing lost the angel―

「鷺沼診療所?初めて見たわよ」



「うん……院長と面談した日に貰ったの。院長のお父さんがやられてたんだって。人口450人の中学校までしかない小さな離島にあって、この救命で働いて苦しかったら紹介するって言われたの。“ERの経験はほとんど活かせないだろうけど、マルチに動けるドクターが行かなきゃ診療所は成り立たないけど、君なら即戦力だ。だから辛くなったら言って。癒やされるよ”って。でもね、充実してるのにいつか行きたいって思ってて。こういうところで働けたら、医者として幸せなんじゃないかって」



「わからなくもないけど、優海は救命一筋にやって来たんじゃないの?大した症例を積めないところよ?」



「頭ではわかってる。物足りたくなるんじゃないかって思うようにしてたけど、魅力を感じるんだよね……」



都会の騒音から解放されて。

穏やかな空間で。

1分1秒の争いない、人と人との繋がりを感じながら過ごしたい。



「まぁ、賴真が行かないとか、遠距離やすれ違いを嫌がったら、行かないんだけどね」



賴真を突っぱねてまで行く勇気はない。

今の私にとっては、夢のまた夢。

賴真やこの病院を中心に世界を回してるから。