騒音で聞こえないとわかりながらも、少しでも心音を確かめたくて、男の子の胸に耳を当てて目を閉じる。



「……湊!」



「はっ、はい!!;;」



「車にある私の鞄にステートがある!持って来て!」



「“ステート”?;;」



「聴診器!走って!!」



「わかった!;;」



キーケースが入ったショルダーポーチごと野次馬に混ざる湊に投げ、思い出したステートを取りに行かせる。

救急車よりは早く来るだろう。



「姉ちゃん!」



「ありがとう」



全力疾走したのか、火事場の馬鹿力か。

2分とかからず戻って来た湊から聴診器を受け取り、何とか聴診は出来る事に。

普通はみんな置いて帰るけど、大学病院時代に先輩が忘れた日に勝手に使ってたと聞いて、それから私は持ち帰るようにしてたのだ。

気の知る人で、尚且つ一声あれば気にしなかったんだろうけど。



「どうだ?」



「……気胸かも知れません」



「貸して」



確信の持てない私。

賴真に聴診器を渡し、胸部に触れるも、気胸の人に見られるプチプチ音を感じない。



「気胸だが、小さいな。骨盤だけだ」



端折った説明だけど、言いたい事を理解。