来客はほとんどないため、翠は少し驚きながら、インターホンを確認する。すると、写し出された画面には会いたいと願っていた彼の姿があった。
翠は、挨拶もせずにすぐに玄関へと走った。

 鏡で簡単は身なりを整えて、ドアを勢いよくあける。すると、そこには少し驚きながら翠を見る色の姿があった。


 「……おまえ、誰か確認してからドア開けろよ。」
 「………すみません。でも、インターホンで見ましたよ?」
 「だったら、返事をしろ。」
 「冷泉様が見えたので走ってきてしまって………。」
 「ったく、おまえは。……まぁいい。邪魔するぞ。」
 「え??!冷泉様?」


 翠を押し避けてさっさと部屋に入ってしまう色を、翠は戸惑いながらただ見つめていた。
 そして、いつも勉強しているリビングへ入ると、色は大きめな袋を翠に手渡した。


 「えっと……これは?」
 「おまえにやる。誕生日プレゼントだ。これに着替えてさっさと出掛けるぞ。」
 「誕生日プレゼント!?嬉しいです。………出掛ける……?えっと、なんか急に話がすすんで、理解出来てないんですけど……。」
 「いいから着替えろ。」
 「はい……。」


 翠は袋から両手を使ってプレゼントを取って、丁寧に包装を取ると、そこには色鮮やかな花柄の生地が出てきた。淡い黄色のような翠色に落ち着いた色味の花達が描かれている。他にも帯や花の形の宝石のようなものがついた、帯留めに下駄、巾着があった。


 「わぁ………すごく綺麗です!浴衣、ですよね?こんな高価なもの、いただいてもいいんですか?」
 「おまえに合わせて買ったものだ。貰ってもらわないと、ただのゴミになる。」
 

 素っ気なくそう言う色だったが、それでも翠は嬉しかった。
 色がわざわざ自分のために浴衣を選んでくれて、そして誕生日に家まで持ってきてくれたのだ。「生まれてきてくれてありがとう。」を伝える、誕生日のお祝いの日。
 色はどんな気持ちで翠にプレゼントをしてくれたのかわからない。けれども、翠のために考えてくれた気持ちと行動が、とても嬉しかったのだ。


 「冷泉様、本当にありがとうございます。とっても嬉しいですっ!」


 感動して半分泣きそうになりながら、お礼を伝えると、色も少し照れ隠しのぎこちない微笑みで、「あぁ。」と受け取ってくれたのだ。


 翠は綺麗な浴衣を抱き締めながら、何回もその綺麗な緑色の生地を夕日にかざしてか眺めていた。
 キラキラと光り輝いて見えるその浴衣は、翠が今まで見てきたどの浴衣よりも、1番美しい宝石のように見えた。