「あの、冷泉様、、、?」
 「おまえが俺にギリシャ語を教えてもらう変わりに、俺がおまえにいろんな事を教えてやろうか?」


 色は、ゆっくりと顔を近づけ、耳元で色気のある低い声でそう囁いた。
 驚きとくすぐったさと、胸の高鳴りで、翠は体を震わせてしまう。その様子をみて、クククッと笑う声さえも艶がありドキドキしてしまう。


 「どうする?」


 その声に流されそうになってしまう、自分がいるのに翠は驚いたが。好きでもない相手に、ドキドキし、それを受け入れようとしているのだ。大人の魅力なのだろうか?

 だが、翠はすぐに冷静さを取り戻して、色を避けるようにソファから立ち上がった。


 「結構です!!」


 そう強く拒否の言葉を色に突きつける。恥ずかしさと、怒りのせいなのか、顔が赤くなっているのが分かる。
 おや?とした、顔をして色は翠を見上げていたが、すぐにまたあのニヒルな笑みを浮かべた。


 「まぁ、これでキスでも受け入れてたら、家庭教師は断ってたけどな。」
 「なっ!!た、試したんですねー!」
 「お前が本気で安心したよ。」


 冗談なのか本気なのかわからないように、楽しそうに笑う色を見つめて、翠は「油断ならない人だ!」と、改めて危機感を持ったのだった。