エピローグ




 『じゃあ、ここの壁紙は、こっちの柄でいいかしら?』
 『はい。そちらの方が日本の小物が映えると思います。』
 『オッケイ!じゃあ、それにしましょう。……じゃあ、今日はこれで終わりにしましょうか、翠。』
 『ええ。お疲れ様でした。』


 翠は、スタッフに挨拶をし、片付けをして打ち合わせの部屋から出た。


 翠が「one sin」の日本スタッフの代表として現地に派遣されてから1ヶ月が過ぎた。
 お店を一から作り上げるのは、想像以上に大変で、翠は休みなく働いていた。
 日本とは違う異国での生活に、始めは苦労したけれど、それでも憧れの土地という事もあり、翠は毎日が新鮮で幸せだった。


 『翠!今日は夕飯一緒に食べに行かない?』


 翠の後を追いかけて、ギリシャ人の男性が声を掛けてくれる。いつも親切にしてくれる年上の優しい男性だった。
 すると、横から別の女性スタッフが『ダメよ!』と、その男性を止めた。


 『今日は、日本から大切な人が来る日なのよ。邪魔しちゃダメ!』
 『翠、そうなのかい?』
 『ごめんなさい。そうなの、今から空港に行くから、また誘ってね。』


 翠は頭を下げて謝りながら、二人のスタッフに手を振って別れた。
 その後は、タクシーに乗って空港へと向かう、はずだった………。