私はそれを聞いて、一気に冷や水を浴びせられたかのような心地がした。顔に集まっていた熱がサーッと引いて、膝の上にあるバッグの持ち手を握る指が、微かに震えだす。

「なんかその内容がさ、“教室でふたりっきりになった時のことを覚えてる?”的な感じだったからさ、もしかしてヒメ……姫のんが差出人だったりしてーとか、その時一瞬思ったんだよね。だって、俺があの日教室に着くまで、ふたりきりで先生を待ってたんだろ?」

 あぁ、関谷くんはなんでそんなに鋭いのだろうか。
 私は生唾を飲んで、顔を上げられなくなってしまった。これは……そうだ。あの事件の日と同じだ。バレることが怖くて、心臓が嫌な音をたてて体中をのっとられたみたいな……。

「違うよ」

 その時、隣に座っている央寺くんが、さらっと否定した。央寺くんは、ほぼ私だと確信しているはずなのに。それに、先週ここで『中三の時のアレのせい?』と言っていたにも関わらず。

「あれ、誰かのイタズラ」
「え? そうなの?」