少女はその夜、ふと、目を覚ました。
尿意を覚えたわけでもなければ、喉が乾いたわけでもない。
なにかの気配を感じたわけでもなければ、なにかに起こされたわけでもない。
ただただ静寂とした、墨の漂うような闇の中で、目を覚ました。
体が、なにかで吊り上げられるように軽く、持ち上がる。
寝起きの不快さや不明瞭もなければ、手足の動きに鈍さもない。
瞬発的な、まさに覚醒だった。
洋服ダンスの上に飾ったクマのぬいぐるみ。
ペンギンの貯金箱。
机の上に置いたランドセル。
ドアの横に立つ観葉植物。
上半身だけを起こして見回した室内は、暗然。
オレンジ色のナツメ蛍光灯が、淡く弱々しい陰影を浮かせていた。
「……お水……」
呟いて、少女はベッドからゆっくり抜け出した。
ひたり、と、床についた足からは、水溜まりに踏み込んだような冷たさが伝わる。
尿意を覚えたわけでもなければ、喉が乾いたわけでもない。
なにかの気配を感じたわけでもなければ、なにかに起こされたわけでもない。
ただただ静寂とした、墨の漂うような闇の中で、目を覚ました。
体が、なにかで吊り上げられるように軽く、持ち上がる。
寝起きの不快さや不明瞭もなければ、手足の動きに鈍さもない。
瞬発的な、まさに覚醒だった。
洋服ダンスの上に飾ったクマのぬいぐるみ。
ペンギンの貯金箱。
机の上に置いたランドセル。
ドアの横に立つ観葉植物。
上半身だけを起こして見回した室内は、暗然。
オレンジ色のナツメ蛍光灯が、淡く弱々しい陰影を浮かせていた。
「……お水……」
呟いて、少女はベッドからゆっくり抜け出した。
ひたり、と、床についた足からは、水溜まりに踏み込んだような冷たさが伝わる。