ふと彼女の足元に視線を向けると、ペタンコの靴だった。

そこから上へと向けてみると、お腹がふっくらしていることに気づいた。

ああ、妊婦さんなんだと私は思った。

「お久しぶりです」

そう言った速水さんに、
「久しぶり」

社長は返事をした。

「あの、そちらの方は…?」

速水さんが社長の隣にいる私の存在に気づいたので、
「社長秘書の佃です」

私は自己紹介をすると、ペコリと頭を下げた。

「ああ、秘書の方でしたか」

納得をしたと言うように首を縦に振ってうなずいた速水さんに、
「秘書だけど、恋人でもあるんだ」

社長が言った。

「えっ、そうなの?」

速水さんは驚いたように目を見開いて聞き返したけれど、
「理京さんにも隣にいてくれる人がいてよかったわ」
と、ホッとした様子で言った。