そう言えば仕事のパートナーとしてはもちろんのこと、結婚相手として愛していた彼女がいたって言っていたな。

その話を思い出しながら、
「ええ、最近つきあい始めました」

私は田中さんの質問に答えた。

「やっぱりね」

納得したように言った田中さんに、
「気づいていたんですか?」

私は聞き返した。

「何となくだけど、社長と佃さんの間に流れている空気がちょっと違っていることに気づいてた」

田中さんが答えた。

「そ、そうなんですか…」

さすが長く勤務しているうえに秘書室長である。

そう言う変化にちゃんと気づいたのは、長年勤めた勘と言うヤツなのだろう。

「もしかして、呼び出しをしなかったのは…?」

続けて聞いた私に、
「そう言うことよ」

田中さんは答えた。