唇を離すと、私の肩に落ちた髪を手ですくった。

「傷んでいるところも切れているところもない。

広がっているところも特にない、実に美しい髪だ」

社長はそう呟くと、毛先に口づけをした。

「なっ…!?」

髪の毛にキスをした…って、違う違う!

ツッコミを入れるところはそこではない。

「か、髪ですか?」

私がそう聞いたら、
「エレベーターに閉じ込められた時に見て思ったけれど、本当に君は美しい髪をしているよ」

社長はフフッと目を細めて笑った。

その顔はとても色っぽくて、思わず見とれてしまった。

「僕の理想にめぐりあえて、とても嬉しいんだ。

もっと近くで見ていたいと思ったから、人事部に頼んで君を秘書課へ異動させたんだ」

社長は言った。