「どこにいますかね」

「…」

「見つけて殴ってやりたいんですけど」

「…」


 私の言葉に、おじさんは目をまるくして、言葉を探すように目をあちこちに散らして、それきり何も言わなかった。

 おじさん改め、無駄にハゲ散らかったろくすっぽ役にも立たない新聞配達屋である。

 善良な市民の人助けをするのはいつなんどきも警察ばかりではないと、証明してくれる人間が一人でもいていいんじゃなかろうか?


 物分かりのいい私はそれ以上追求せずにぺこりと頭を下げて、相変わらず真冬の平日を剥き出しの生足という制服姿で。今一度旅に出ることとする。

 何かを探すようにふらふらと歩く。いや彼氏を見つけたいだけである。
 それがこんなに骨が折れることだとは。


(日野のばかやろうめ)

 どこ行ったんだよ、あいつ。







 横断歩道の赤信号をぼんやりと見上げて、私は踵を返して逆方向に歩き出す。