一人暮らしの俺の部屋には当然シングルベッドしかないし、他に敷布団もないので、シングルベッドで一緒に寝ることになった。



「とわーこっち向いてよー」

俺は完全に陽菜に背を向け横になる。

「疲れたから寝る」

そう素っ気ない返事を返すと、陽菜が後ろから抱きついてきた。

「ちょ、お前、それはさすがに!!」

理性が持たない!

陽菜の方へ向き直り即座に彼女を押し戻す。

「だめだって!!」

我ながら余裕のなさが情けない。

「なんで?」

俺とは対照的にぽかんとしている陽菜の無垢さを恨めしく思った。

「お前は女で俺は男!それはどうしてもくつがえせないことだからに決まってるだろ!!もう、もう……昔とは違うんだよ!!」

一息でそうまくし立てるように言いきった。

しかし彼女の顔を見た瞬間、やってしまったと気づいた。

陽菜は明らかに傷ついた顔をしていた。

「あはは、そ、そうだよね……
わ、私が自分勝手にごめんね、
も、もうやめるから。」


幼稚園の時から責任感が強くて自分一人で抱え込みやすい陽菜を支えてきたのは、他でもない自分だったのに。

陽菜は小さい時から言っていた。

"本当の私を見たらみんな幻滅しちゃうから見せちゃいけないんだ"

"でもときどきそれがものすごく寂しくなるんだ
嘘をついてるようで辛い"

と。

その俺が、陽菜の唯一素でいられる場所を奪ってしまった。

なに、してるんだ、俺。

陽菜は本当はさびしがりやだ。

学校では1人でずんずん突き進んでいく強い生徒会長だけど、今は、違う。

こいつを守ってやれるのは、自分だけだ。