俺は思わず、その美しい黒髪をそっと撫でた。

一切の絡まりのないその髪は音を立てずに指からこぼれおちていく。

「ほんっと無防備……。」

襲おうだとかそんな下劣なこと考えないけれど、
もう少し男の部屋にいるって意識してくれてもいいんじゃないかな。

「んー」

「あ、ごめん、起こした?」

「とわも一緒に寝よ」

さっき触ったので起こしてしまったのか目覚めた陽菜が早々に素っ頓狂なことを言う。

「え、は?!お前何考えてんの!?」

「ほら、寂しいからこっちきて。」

陽菜が袖元をひっぱっている。

「こ、こっち来てじゃない!!
お前は女で俺は男なの、わかってんの!?」

俺は思わず叱咤する。

「わかってるもん。
だけどほら寂しいし寒いからさ、とわ一緒に寝ようよ?寝て、くれないの……?」

この天然め。

俺が陽菜のお願いに弱い事を知ってやってんのか?

……まさかな。こいつはそんな人の行動を計算して行動できるやつじゃない。


「わかったよ。しょうがないなー」

「ほんと!?やったー!!」

大喜びする陽菜を横目に見ながら、OKしてよかったななんてこっそりと考えてしまっていた。