まあ、将来の約束をしても、永遠を誓うようなキスをしても、この毒は変わることがないみたいだ。石川くんは、他の女の子たちと態度を変えれば気が引けるかも、とわざとわたしに毒を吐いていたらしいけれど。気持ちが通じ合ったあともこれじゃあ、元々の性格なのかもしれない。
それでもわたしは、この毒を嫌いになれないし、むしろ愛おしいとさえ思ってきてしまう。
長い時間をかけて体内に染み込んだ毒と、さっき石川くんの唇が触れた左手から吸収された毒が、呼応しているのかもしれないと思った。
ああ、そうか。致死量は超えていないけれど、すでに中毒になっていたのか。もうとっくに、この人なしでは生きられない身体になっていたのか。
それに気付いてしまったらもう止められなくて。風邪を移してしまうかもしれないから、今日は何もできないのは分かっているけれど、止められなくて。
石川くんの頬に押し付けられていた手を少し動かして撫で、親指で唇をなぞる。
「今はだめだって言ったのに。話聞いてました? もう忘れたんですか?」
毒を吐きながらも石川くんは嬉しそうに笑って膝立ちになり、横になっているわたしの身体に覆いかぶさった。
(了)



