「僕は小松さんと仲良くしたいし、好きになってもらいたいんですが、どうして小松さんは僕を嫌うんですか?」
「……、……、……え?」
理解できないのは高熱のせいか。それとも全く、微塵も、これっ――ぽっちも予想していなかったせいか。
恐らくそれはどちらも当てはまっているから、わたしはすぐに返事をすることができない。「あ?」だの「え?」だの、掠れた声で返答には程遠い言葉を発して、ただ石川くんを見上げていた。
戸惑うわたしに石川くんは「一体僕の何がいけないんでしょうね」と。さっきと同じ質問をする。
「や、ええと……ごめん、もう一回言ってくれる……?」
「小松さん……こんなに近くで言ったのに、聞き逃したんですか? しっかりしてくださいよ。良かったら僕、耳かきしてあげましょうか?」
「そういうとこ……!」
「ええ?」
「そういうところじゃないかな! そういう、すぐに毒を吐くところ!」
指摘すると石川くんは目をぱちくりして、首をこてんと傾げた。
「僕なりの愛情表現ですけど」
「は、はあ?」
なんっ……だ、それ! なんだその愛情表現は!
「ごめん……全く意味が分からないんだけど……」
「ですから、愛情表現なんです」
「だから、意味が分からないってば。愛情表現って、優しくしたり甘やかしたり……そういうんじゃないのかな?」
「ええ? だからその通りにしてるじゃないですか」
「どこが……!」
勢いあまって飛び起きようとするけれど、その前に石川くんがわたしの肩を掴んでそれを阻止する。片手で楽々とわたしの動きを止めた石川くんは、不思議そうな顔でじっとわたしを見た。
「お見舞いに来てベッドまで運んで身体を拭いておかゆも作りましたよ。こんなに優しくして甘やかしているのに、これじゃあ足りませんか?」
「そうじゃなくて、毒を吐くのが問題なの!」
「ええ、そうなんですか?」
「そうなの! 他の子たちには優しいのに、なぜかわたしにだけ毒を吐く。わたしと仲良くしたいって思ってくれているなら、まず解毒しようか!」
熱はまだ下がっていないし、声も掠れているというのに。こんなに大声を出したせいで、また少し熱が上がったかもしれない。
はあはあと息を切らして、枕に深く沈む。



