ぼくは、草むらに もどってきた。

ぼくは、 おいしい草を たくさん 食べる。

パクパク、ムシャムシャ。

パクパク、ムシャムシャ。

木の上で 食べられなかった間の分まで、ぼくは、おなかいっぱい、草を食べる。


ああ、おなか、いっぱい。

ぼくは、たくさん 食べすぎて、うごけなくなった。

その時、ぼくの うしろに みどり色の かげが 見えた。

カマキリ!?

ぼくは、おどろいた。

どうしよう!?

もう おなかが おもくて、にげられない。

だれか、たすけて!!

ぼくは、まわりを 見まわした。

だけど、だれも いない。


食べられる!!

そう思って、ぼくは、目をとじた。



だけど、いっこうに 食べられる けはいは、ない。

ぼくは、そっと、目を あけた。

「こんにちは。
きみは、だれ?」

そう話しかけてきたのは、バッタくんだった。

さっきの みどり色の かげは、バッタくんだったのかぁ。

ああ、よかった。

「こんにちは。
ぼくは、ぼくだよ。
きみは、だれ?」

「ぼくは、ショウくん。
ショウリョウバッタさ。」

ショウくんは、元気よく 言った。

「ショウくんは、何してるの?」

ぼくは、聞いた。

「そんなの、きまってるだろ?
おいしい 草を 食べてるんだ。
ボクくんは、何してるの?」

「え!?」

ぼくは、何を 言われてるのか、よく分からなくて、きょとんとした。

「だから、ボクくんは、何を してるの?」

「ボク…くん?」

「きみ、ボクなんだろ?」

ショウくんが 何を 言ってるのか、よく分からなくて、ぼくは 考えた。

で、気づいた。

『ぼくは、ぼく』

ショウくんは、『ぼくの名前はボクだ』って思ったんだ。

ちがうよって言おうとして、ぼくは考えた。

ぼくには、名前が ないんだ。

名前を どう つければ いいか、分からなくて、こまってたんだ。

だったら、今、ぼくの 名前を きめれば いい。

ぼくの名前を ボク にする。

それって、めいあん じゃないか?

だから、ぼくは、言ったんだ。

「うん。
ぼくの名前は、ボクだよ。」

って。

ぼくは、ショウくんと たくさん あそんだ。

たのしかった。

お日さまが、とおくの じめんと なかよくしはじめるころ、ぼくと ショウくんは、また あしたも、ここで いっしょに はっぱを 食べる やくそくを した。