ひとり、とりのこされた ぼくは、また 草むらに むかって 歩きはじめた。

しばらく 行くと、赤くて 丸い せなかに 黒い水玉もようの かわいい 女の子に 出会った。

「こんにちは。」

ぼくは、にっこり わらって あいさつを した。

「こんにちは。
あなた、はじめて 会ったわね。
わたしは、てんとう虫の ナナよ。
ナナちゃんって、よんでね。」

ナナちゃんは、キラキラの かわいい えがおで 言った。

この子と お友だちに なりたい。

ぼくは、思った。

「ナナちゃん。
ぼく、ひとりぼっちなの。
お友だちに、なってくれない?」

ぼくは、ゆう気を 出して、言った。

すると、ナナちゃんは、

「いいわよ。
あなた、お名前は?」

「ぼくは、ぼくだよ。」

ぼくは言った。

「あなた、名前がないの?」

「うん。」

「だったら、自分で つければ、いいわ。」

「自分で?」

「そうよ。わたしも 自分で つけたんだもの。」

自分で、名前を つける?

考えても みなかった。

「でも、名前って、どうやって つけるの?」

「わたしは、名前が まだ ない時、
『ナナホシテントウ』さんって、よばれた
から、それじゃ長すぎて困るな と思って、
短く、ナナちゃんにしたわ。
でも、あわてなくて だいじょうぶよ。
ゆっくり なやんで、じっくり 考えてね。」

ぼくは、考えた。

ヒラリさんは、きっと ひらりって とぶから、ヒラリさんなんだ。

ナナちゃんは、ナナホシテントウだから、ナナちゃん。

じゃあ、ぼくは?

ぼくは、ひらりとは とべない。

ぼくが 何の 生きものなのかも 分からない。

ぼくは、困ってしまった。

すると、ナナちゃんは、はっぱの 先にのぼりながら、言った。

「じゃあ、ボク、バイバイ。
また こんど、あそびましょ?
わたしは、むこうの アブラ虫に
いじめられてる お花を たすけに
行ってくるわ。」

そう言うと、ナナちゃんは、はっぱの 先から、お日さまに むかって とびたった。


ピカピカの お日さまに むかって とぶ ナナちゃんは、お日さまみたいに ピカピカ かがやいてた。