ぼくは、生まれた時のことを知らない。

ぼくが おぼえているのは、お日さまが3回のぼって、3回しずむ前、ぼくが草むらにいたこと。

ぼくは、はっぱを 食べていた。

パクパク、ムシャムシャ、ただ ひたすらに 食べていた。

そんな時、とつぜん、あらわれたんだ。
みどり色の大きな大きなカマキリが。

ぼくの体の10こ分くらいある大きなかまを ふり上げて、ぼくや、ぼくの まわりの なかまのことを ねらっていた。

ぼくは、あわてて にげ出した。

はっぱから はっぱへ とびうつり、わき目も ふらずに、いっしょうけんめい にげたんだ。

ぼくは、はしった。

ぼくは、とんだ。

ぼくは、よじのぼった。

そうして、ぼくは、この木の あなに たどりついたんだ。

ぼくは、かくれた。

カマキリに 見つからないように、いきを ころして、しずかに かくれた。

そうしているうちに、
お日さまが しずんで、
お日さまが のぼって、
また お日さまが しずんで、
また お日さまが のぼって、
またまた お日さまが しずんで、
またまた お日さまが のぼった。

ぼくは、はらペコになった。

ずっと なにも 食べてないんだもの。

ぼくは ゆう気を 出して、草むらに もどることに した。