「全然情けなくなんかありませんよ。
まだそんなに彼女さんの事、思ってるて事
でしょ?
こんなに優しい課長を振るやなんて、
その彼女さん、わがままなんとちゃいます?」

姫はドン!と怒りを滲ませてグラスを置いた。

「姫!」

一瞬、声を荒げた俺に、姫は驚いたように目を見開いた。

「いや、ごめん。
でも、結は悪くないんだ。
俺が結に甘え過ぎてただけだから。」

「どういう事ですか?」

「まあ、言ってみれば、5年間、俺だけが
わがままを言い続けて、結はそのわがままを
聞き続けてきたのに、初めて言ったわがままを
俺は聞き流して聞いてやらなかったんだ。」

「初めてゆうたわがままて?」

「………『離れたくない』
『一緒についていきたい』」