エレベーターで最上階に上がると、ドアにシンプルなゴールドのプレート。

【 A列車 】

変わった店の名前だと思った。


ドアを開けて、後悔した。

音楽に疎い俺は知らなかったんだ。

その店名が有名なジャズのタイトルだなんて。


そこは、ジャズバーだった。

流れていたのは、5年前のあの時と同じ曲。

俺には何の曲かは分からないけど、音楽に疎い俺でも聞いた事のある有名なナンバー。

結…

結…

結…

自分でも気付かないうちに、頬が濡れていた。


「課長?」

姫が心配そうに俺を見上げる。

「姫、ごめん。
ここは、無理だ。」

俺は、店のドアを閉めて、エレベーターに戻った。

姫は気遣うように俺について来た。