廊下にお義姉さんが立っていた。

「顔を洗って戻ります。」

「結のわがままでごめんなさい。」

お義姉さんが頭を下げる。

「いえ、結は俺にわがままを言った事は
ありませんから。
今回の事は、結にわがままを言わせて
やれなかった俺の責任です。
結は悪くありません。」

結は、いつも俺のわがままを聞いてくれていた。

ゲームばかりしてても怒ることもなく、家事を任せきりにしても、文句ひとつ言う事なく、いつも笑って俺を優先させてくれていた。

俺は、それに甘え過ぎたんだ。

結が、離れたくないって泣いた時、たかが数ヶ月だと取り合わなかった。

結は、泣くほど離れたくないって思ってくれたのに、俺が取り合わなかったから、それ以上わがままを言って困らせる事はしなかった。

あの時、ちゃんと結と向き合っていたら、きっと結は今でも俺の結だったんだ。

自己完結しないで、ちゃんとプロポーズしてから大阪に行けばよかった。

残業200時間でも、結を連れて行けばよかった。

結ならきっと乗り越えたし、乗り越えられなければ、退職して専業主婦になっても良かったんだ。

悪いのは、俺だ。