俺は、お義姉さん夫妻が宿泊している部屋に連れて行かれた。

そこには涙で化粧も崩れた結がいた。

俺はこれからお義姉さんに言われるであろう事に緊張し過ぎて、結に駆け寄る事も出来なかった。

「結はねー、表情がとっても分かりやすいん
だけど、海翔くんはあんまり表情が出ないん
だよね。
表情を取り繕わなきゃいけない何かを
感じてるんでしょ?」

「何の事ですか?」

認めたら終わりだ。

結は、なんでもない。

俺たちは、何も問題なんてないんだ。

「結の泣き腫らした顔を見ても、少し驚いた
だけで、慌てないのは、分かってるから
だよね?」

「……… 」

「このままじゃ、あなた達、いずれ、破綻
するわ。
だったら、今、終わらせましょう?」

「………嫌です。」

「隣に好きな人がいるのに、ずっと片思いの
状態で一生を過ごすのよ。
それがどんなに辛い事か、想像できる?」

「結は、俺をちゃんと愛してくれてました。
だから、この先、時間を掛ければ、きっと
また…」

「無理よ。
時間を掛ければ、思い出は美化されて、現実は
悪い所ばかりが目に付くようになるわ。
あなたは、この先、どんどん嫌われていくの。
だったら、あなたは結の中の綺麗な思い出に
なった方がいい。
その方が幸せになれるわ。」